労働基準法が抱える最大のグレーゾーンとして、労働者からの不満や告発が絶えないのが「裁量労働制」と「固定残業代(みなし残業)」の運用実態です。
インターネット上の質問サイトやSNSを調査すると、当事者たちの切実な叫びが確認できます。
「求人票に『固定残業手当45時間分を含む』と書いてあり、毎月60時間以上働かされているのに追加の残業代が1円も振り込まれない」(IT関連・20代社員の手記より)
「企画業務型裁量労働制を理由に、タイムカードの打刻すら許されず、上司からは毎朝9時の定例ミーティングへの絶対出席を強制されている。裁量などどこにもない」(広告代理店・30代元社員の告白より)
厚生労働省の監督指導結果でも、固定残業代制度を採用している事業場において、「設定されたみなし時間を超えて働いた分の差額を支払っていない」ケースや、「基本給と固定残業手当の金額内訳が契約書に明記されていない」ケースが数多く摘発されています。
固定残業代制は、あくまで「一定時間分の割増賃金をあらかじめ定額で支払う」仕組みに過ぎません。例えば「月30時間分」のみなし残業代が支給されている場合、実際の残業時間が30時間を超えた瞬間に、企業はその超過分の残業代を別途計算して全額支給しなければなりません。これを怠れば賃金未払いの違法行為となります。
また、業務の進め方や時間配分を本人の大幅な裁量に委ねるはずの「専門業務型・企画業務型裁量労働制」においても、実態として出退勤時間を厳密に拘束したり、遂行不能なノルマを課して長時間労働を強いたりする事態が問題視されています。裁量労働制であっても、22時以降の深夜労働割増(25%以上)や法定休日労働割増(35%以上)の支払い義務は免除されないという事実は、多くの労働者が見落としがちな重要ポイントです。