なぜ三毛猫の約99.9%がメスとして誕生するのか。その謎を解き明かす鍵は、細胞の中に存在する「X染色体」にある。
猫の毛色を決定づける遺伝子のうち、オレンジ(茶色)を発現させる遺伝子はX染色体上にしか存在しない。一方で、黒色を発現させる遺伝子も別のX染色体に関連している。メスは「XX」という2本のX染色体を持つため、片方のX染色体からオレンジ、もう片方から黒、そして常染色体から白色が指定されることで、見事な三色模様が形成される。これに対してオスの染色体は「XY」であり、X染色体が1本しかない。そのため、理論上は黒か茶のどちらか一方しか発現できず、白を加えた3色が揃うことは基本的にあり得ないのだ。
近代遺伝学の礎を築いたグレゴール・メンデルがエンドウ豆で示した遺伝法則は、今日では分子生物学へと進化を遂げた。日本の国立遺伝学研究所をはじめとする世界の研究機関でも、こうした毛色遺伝子のモザイク現象(ライオニゼーション/X染色体の不活性化)は、哺乳類の発生学における重要な研究テーマとして扱われている。1本の染色体がランダムに休眠することで生まれる独特の斑点模様は、文字通り自然が生み出した唯一無二のアートと言える。