式典会場を見渡した際、視界の大部分を占めるのがダークトーンのスーツです。ここで多くの新入生が頭を悩ませるのが、大学入学式スーツ色マナーの実情と、黒か紺かというカラー選択のジレンマです。かつて平成中期まではグレーやストライプ柄も散見されましたが、2010年代以降はリクルート市場の均一化に引きずられる形で「黒無地(プレーンブラック)」が圧倒的なシェアを握ってきました。
日本フォーマル協会やアパレル各社の実売データを紐解くと、入学式におけるスーツのカラー比率は現在、黒無地が約70%、ダークネイビー(濃紺)が約25%、チャコールグレー他が約5%となっています。黒無地は「悪目立ちしない」という強力な安心感を提供する反面、仕立てや生地の質感、コーディネートを誤ると「入社式に向かう新社会人」のような重苦しい事務感を醸し出してしまう危険性を孕んでいます。
上品な知性と華やかさを両立させたい層の間で急速に支持を広げているのが、深みのあるダークネイビーです。室内では落ち着いたトーンを保ちつつ、春の日差しが降り注ぐ屋外のキャンパスでは鮮やかな透明感を放ち、顔色を明るく見せる効果を発揮します。式典という慶事におけるマナー上も、ダークネイビーは国際的なプロトコールにおいて最も格式高いビジネス・セレモニーカラーと位置づけられており、入学式で着用してマナー違反とされる懸念は一切ありません。
さらに成否を分けるのが、入学式スーツシャツネクタイ選び方の巧拙です。就活では白のレギュラーカラーシャツに地味なストライプネクタイが定番とされますが、入学式で同じ装いをすると慶祝の空気に馴染みません。メンズであれば淡いサックスブルーやピンクのクレリックシャツに、春らしいパステルカラーやワインレッドのシルクタイを合わせることで、スーツが黒無地であっても瑞々しい清潔感を演出できます。レディースにおいても、第一ボタンのないスキッパーカラーではなく、フリルやギャザーがあしらわれたソフトブラウスを選ぶことで、首元に立体的な華やかさが生まれます。