筆順の理解をさらに深める上で面白いのが、この漢字が辿ってきた独特のルーツだ。「凪」という漢字を漢和辞典で調べると、起源が中国大陸ではなく日本国内にあることがわかる。これこそが、我が国で独自に生み出された「国字(和製漢字)」と呼ばれる文字の代表例だ。
風を表す「風がまえ」の中に、停止を意味する「止」を組み込む。風が止まる、すなわち「なぎ」という自然現象をそのまま視覚的な記号へと落とし込んだ先人たちの知恵とセンスには感嘆せざるを得ない。中国古代の甲骨文字や篆書には存在しなかったこの国字は、海に囲まれた日本人の暮らしや感性から生まれた文化遺産とも言えるだろう。