伊丹家を語る上で欠かせないのが、日本文化史に刻まれた表現者たちの濃密な系譜だ。伊丹十三の父であり、息子たちにとっての祖父にあたるのは、戦前・戦中の日本映画界で知的な風刺とモダンな演出で時代を席巻した伝説的映画監督・伊丹万作(本名・池内義弘)である。
長男である池内万作の芸名は、まさにこの偉大な祖父の名から受け継がれたものだ。伊丹十三自身もまた、「巨匠の息子」という拭い去れない重圧と対峙しながら、デザイナー、イラストレーター、エッセイスト、TVディレクター、そして映画監督へと多角的に才能を開花させていった。その遺伝子は、観察眼の鋭さと表現への妥協なきこだわりという形で、第三世代である息子たちへ確かに受け継がれている。