「魚虎」という漢字表記を別の文脈で引くと、実在する意外な小魚に行き当たります。それが「ハリセンボン(針千本)」です。
ハリセンボンは外敵に襲われると、体を大きく膨らませて無数の鋭い棘を逆立てます。その威嚇する姿がまるで「虎が怒って毛を逆立てている様子」に見えることから、古くは魚虎という漢字が当てられました。同じく棘を持つ魚や、鋭い歯で獲物に噛みつく肉食魚に対して、比喩的に「魚虎」の文字が使われてきた歴史があります。
巨大な海のプレデターであるシャチと、ユーモラスな風貌ながら強烈なトゲで身を守るハリセンボン。一見正反対に見える二つの生物が、いずれも「虎のような気性の荒さ・鋭さ」という共通点によって「魚虎」の名を与えられている点は、漢字文化の非常に興味深い一面です。