時計の針を2014年に戻そう。当時、スペインの巨城レアル・マドリードで絶頂期を迎えていたクリスティアーノ・ロナウドが、MTG ReFaプロモーションイベントのために来日を果たした。華やかなステージの主役としてスポットライトを浴びる彼のもとに、ひとりの日本人少年が登壇した。少年の名前は岩田湧太。彼は世界的ヒーローに直接想いを伝えるため、慣れないポルトガル語で書いた手紙を懸命に声に出して読み始めた。
文脈のつたない発音、緊張で途切れ途切れになる声。会場に集まった一部の報道陣や観客からは、思わず薄笑いや失笑が漏れ聞こえた。緊張感に耐えながら必死に言葉を紡ぐ少年に対して、冷ややかな視線が向けられたその瞬間、場の空気を一瞬で変えたのがロナウド本人だった。彼は周りを見回すと、通訳を介して静かに、しかし毅然とした態度で問いかけた。「なぜ笑うんだい? 彼のポルトガル語は上手だよ。一生懸命に取り組んでいるのだから、笑うのではなく喜ぶべきだ」。会場の嘲笑は瞬く間に静まり返り、温かい拍手へと変わった。まさにスポーツメディア史に残る「神対応」の瞬間であった。