1990年代半ば、家庭用ゲーム市場は表現の転換期を迎えていた。ドット絵と実写画像を融合させ、テキスト主導で恐怖を増幅させる手法は、当時のグラフィック技術の限界を逆手に取った天才的な発想だったと言える。選択肢一つで展開が劇的に変化し、時には不条理なバッドエンドへと叩き落とされる恐怖。ただ驚かせるのではなく、人間の内面に潜む闇をえぐるようなシナリオ展開は、当時の子供たちに強烈なトラウマを植え付けた。
飯島多紀哉が構築した「語り部」スタイルのシステムは、従来のゲームにはない臨場感を生み出した。放課後の校舎という身近な空間が、語り手たちの言葉によって少しずつ異界へと変貌していくプロセスの美しさ。それこそが、彼がゲーム業界に打ち立てた金字塔の真骨頂だった。