和彫りの完成度を大きく左右するのが、構図と「額(がく)」と呼ばれる背景処理です。牡丹を主役にするのか、それとも唐獅子や龍の引き立て役として配するのかによって、全体のバランスは劇的に変わります。
腕に施術する場合、五分袖(肘上)、七分袖(前腕中央)、十分袖(手首まで)の長さに応じて、大輪の牡丹を肩口や肘付近に大胆に配置するのが王道です。風や波、雲などの背景を黒墨で塗りつぶす「額彫り」を施し、袖口をすっきりと切り揃える「ぶ切り」や「じゃり切り」といった見切りの美学が、牡丹の艶やかさを一段と引き立てます。
一方、背中一面(抜き彫り・額彫り)の大作では、中央に唐獅子や武者絵を据え、その周囲を岩肌と咲き乱れる牡丹で包み込む構図が圧倒的な迫力を生み出します。背中の広大なキャンバスを活かし、花弁の一枚一枚に細やかなグラデーションを施すことで、動きのあるダイナミックな芸術作品が完成します。