メディアやSNSで「世界で最も危険な空港の一つ」と騒ぎ立てられるジブラルタル空港。その理由は、一般道路との平面交差だけにとどまりません。パイロットたちを最も緊張させるのは、ジブラルタルの象徴である巨大な石灰岩の岩山「ザ・ロック(標高426m)」が生み出す特殊な気象条件です。
東から地中海の風(レバンテルと呼ばれる東風)が吹き付けると、切り立ったザ・ロックの背後に激しい渦流と強烈なウインドシア(局所的な急変風)が発生します。滑走路のすぐ横にそびえ立つ巨岩が風を乱し、着陸直前の機体に突発的な下降気流や揺れをもたらすため、着陸態勢に入るパイロットには極めて高度な操縦技術が求められます。
さらに、全長約1,777メートルという短めの滑走路は、両端が海(西側はジブラルタル湾、東側は地中海)に突き出しています。オーバーランすれば即座に着水しかねないプレッシャーが加わることも、「危険」と呼ばれる要因となってきました。
しかし、【危険性の真相】として特筆すべきは、同空港における民間定期便の重大事故が実質的に皆無であるという実績です。ジブラルタルへの着陸は特別な訓練と資格を持つ機長のみに許されており、悪天候や強風時には無理をせず隣国スペインのマラガ空港などへダイバート(目的地変更)する厳格な安全基準が徹底されています。危険と隣り合わせに見える構造でありながら、世界屈指の安全運航レベルが維持されているのが実情です。