コスモスを漢字で「秋桜」と書くスタイルは、今や日本人にとって完全に定着しています。しかし、この表記が一般に浸透したのは、日本の長い歴史から見ればごく最近の出来事です。
コスモスの原産地はメキシコの高地であり、日本へは明治時代初期(1879年頃)に美術学校の外国人教師によって持ち込まれたとされています。当時、植物学上では「秋咲き大春車菊(アキザキオオハルシャギク)」と呼ばれており、花びらの形が桜に似ていることから、明治末期から大正時代にかけて文学者たちが「秋桜」という字を当て始めました。
ただし、当時はあくまで「あきざくら」と読まれていました。これを「秋桜」と書いて「コスモス」と読ませる決定打となったのが、1977年に発表された楽曲『秋桜』(さだまさし作詞作曲、山口百恵歌唱)です。この名曲の大ヒットによって、秋を象徴する雅な漢字表記が国民的な共通認識として定着しました。
なお、学名である「Cosmos」の語源は、ギリシャ語で「秩序」「調和」「美」を意味する「kosmos」に由来します。整然と並ぶ8枚の花びらが、古代ギリシャの宇宙観に通じる完全な美しさを備えていたことから名付けられました。