トルコに関する最も代表的な誤解の一つが、「トルコの首都はイスタンブールである」という思い込みです。世界的な知名度や経済規模からイスタンブールを首都と混同されがちですが、トルコ共和国の首都は「アンカラ(Ankara)」です。
かつて東ローマ帝国やオスマン帝国の帝都として1500年以上君臨したイスタンブールに対し、アンカラはアナトリア半島の中央部に位置する内陸都市です。なぜトルコは歴史あるイスタンブールではなく、アンカラを首都に据えたのでしょうか。そこには近代トルコ建国の父、ムスタファ・ケマル・アタテュルクによる深い地政学的決断がありました。
第一次世界大戦の敗戦後、海沿いに位置するイスタンブールは連合国軍によって容易に占領・制圧されてしまいました。これに対し、祖国解放戦争を指揮したアタテュルクは、外敵からの艦砲射撃や海上封鎖を受けにくいアナトリア高原の中心部・アンカラに革命の拠点を置きました。そして1923年の共和国樹立と同時に、正式にアンカラを新首都に制定したのです。
2026年現在の両都市の機能は明確に分担されています。イスタンブールは人口1,500万人を超えるトルコ最大の経済・金融・文化・観光のメガロポリスとして機能し、アンカラ(人口約580万人)は大統領府、国会議事堂、各国大使館が集まる行政と政治の枢要を担っています。