俳優として圧倒的な人気を誇る一方、舞台演出家としても不世出の才能を発揮しました。その最高傑作として名高いのが、女優・森光子の代表作である舞台『放浪記』の演出です。
三木のり平は1981年の再演以降、長年にわたり『放浪記』の潤色・演出を手掛け、菊田一夫演劇大賞を受賞しました。森光子演じる主人公・林芙美子の内面描写を深めるため、舞台のテンポや間(ま)をミリ単位で再構築。有名な「でんぐり返し(後に万歳三唱へ変更)」のシーンをはじめ、シリアスな人間ドラマの中に絶妙なユーモアを織り込む演出は、演劇界で極めて高い評価を獲得しました。
「喜劇とは計算されたリズムである」という信念のもと、演者の立ち位置から台詞のイントネーションまで徹底的に磨き上げる妥協のない姿勢は、多くの名優たちに深い感銘を与えました。