インターネット検索で物件名を打ち込むと、サジェスト欄には「事件」「事故」「危険」といった不穏な単語が並びます。ネット掲示板の5ちゃんねるやまとめサイトにおいて、歌舞伎町のライオンズマンションが一種の都市伝説のように語り継がれてきた背景には、明確な構造的理由が存在します。
最大の要因は、大京が展開した「ライオンズマンション」というブランドの知名度と立地の落差です。1970年代から1980年代にかけて日本全国のベッドタウンを中心に中流家庭向けの安心な住まいを供給してきた大京のブランドが、歓楽街の中枢である歌舞伎町2丁目に建設されたこと自体が、後年のネットユーザーに強烈な違和感と好奇心を抱かせました。
さらに、歌舞伎町という街の持つ性質が噂を加速させました。夜間人口と昼間人口の差が激しく、ホストクラブやキャバクラなどの歓楽街従業員、外国人居住者、フリーランス、個人事務所など、入居者の属性が極めて多様であることから、「内部で怪しげな取引が行われているのではないか」「反社会的勢力の拠点になっているのではないか」といった憶測が一人歩きしていった経緯があります。
取材に応じた元賃貸仲介業者は、「かつての昭和から平成初期にかけては、登記上の事務所利用や夜職関係者のセカンドハウス需要が集中していたのは事実です。しかし、ネット上で語られる『立ち入るだけで危険』といったホラーめいた言説の大半は、歌舞伎町という街のダークイメージをマンション一棟に投影した過剰な創作に過ぎません」と証言しています。