企業のトップとして孫正義氏が会社から受け取っている「給与」にあたる金額は、一般に想像されるメガIT企業の創業者報酬とは大きくかけ離れています。
ソフトバンクグループが提出する有価証券報告書によると、ソフトバンク 孫正義 現在の年収として公表される役員報酬は、例年1億円(固定報酬)程度にとどまっています。上場企業の役員で年間1億円以上の報酬を得ている人物は日本国内に数百人存在するため、順位だけで言えばトップ100にすら入らない水準です。
それどころか、グループ内の給与体系に目を向けるとさらに奇妙な構図が浮かび上がります。ソフトバンクグループ 役員報酬ランキングを確認すると、英半導体設計大手アーム(Arm)の最高経営責任者であるルネ・ハース氏をはじめ、海外事業を統括するグローバル経営陣やファンド運営のキーマンたちは、年間に数十億円から100億円規模の役員報酬を得ています。取締役会の中で、トップであるはずの孫正義氏が「もっとも給与が低い取締役のひとり」という逆転現象が長年続いているのです。
なぜ、孫正義氏は自身の給与をあえて1億円程度に据え置いているのでしょうか。理由は極めて明快です。彼は自ら立ち上げた企業の創業者であり、大株主だからに他なりません。雇われ社長であればインセンティブ報酬や基本給を釣り上げる必要がありますが、オーナー経営者である孫氏にとって、役員報酬を数億円上乗せしたところで資産全体のスケールから見れば微々たる誤差に過ぎないからです。
さらに、日本の税制面における合理性も無視できません。給与所得に対する所得税と住民税を合わせた最高税率は約55%に達します。役員報酬を10億円に設定すれば半分以上が税金として差し引かれますが、後述する株式配当であれば、分離課税制度により税率を約20.315%に抑えることが可能です。この資本主義のルールを完璧に理解した資産管理こそが、孫正義の役員報酬が1億円にとどまり続けている本質的な理由といえます。