造形の奇抜さに生命を吹き込み、唯一無二のキャラクターへと完成させたのが、歌舞伎俳優の中村七之助(2代目)による怪演だ。プレスコ(声の先行収録)方式が採用された現場で、七之助の放つ声音は高畑監督を大いに唸らせた。
どこまでも気品に満ち、雅やかでありながら、どこか芯が抜けたような甘美な響き。自分に拒絶の選択肢など用意されていないと信じ切っている貴公子の voice は、あの尖った顎と奇跡的なシンクロを果たす。傲慢でありながら、どこか憎めない子供のような無邪気さ。七之助の声があったからこそ、帝は単なる嫌な男にとどまらず、見る者の記憶に焼き付く怪物的キャラクターへと昇華した。