透視図法の歴史を遡ると、15世紀のフィレンツェで活躍した建築家フィリッポ・ブルネレスキに辿り着く。彼が確立した線遠近法は、単なる絵画の描画技法にとどまらず、都市の建築設計そのものを根本から変貌させた。平行な直線が遠くの一点で交わるという数学的秩序は、ルネサンス以降のヨーロッパ美術に革命をもたらし、近代的な空間認識の礎となった。
この古典的な幾何学理論は、何世紀もの時を経て海を渡り、現代の日本が誇るアニメーション制作の現場へと脈々と受け継がれている。かつて手描きの職人技で圧倒的な実在感を構築したスタジオジブリの背景画から、緻密な光彩とパースで都市の情緒を切り取る新海誠監督の『すずめの戸締まり』に至るまで、画面の隅々に宿るリアリティの根底には常に計算された遠近法のロジックが存在する。