保険料の安さばかりを追求するネット言説には、制度の運用上見落とされがちな重大な落とし穴が複数潜んでいます。知恵袋などで散見される「裏技」や断片的な情報を鵜呑みにすると、後から手痛い経済的打撃を受けるリスクがあります。
第1の盲点は、国民健康保険料の「地域格差」という不条理な現実です。社会保険(協会けんぽ)の保険料率は都道府県ごとの違いにとどまり、その差も数%の範囲内に収まっています。ところが国民健康保険料は市区町村ごとに完全に独立して設定されているため、同じ年収、同じ家族構成であっても、川を1本隔てて隣の自治体に引っ越しただけで年間保険料が10万円以上跳ね上がる事例が珍しくありません。財政基盤の弱い地方都市や高齢化が進む過疎自治体ほど国保料率は苛烈を極める傾向にあります。
第2の盲点は、退職初年度と2年目の逆転現象です。国民健康保険の保険料は「前年(1月〜12月)の所得」を基準に計算されます。そのため、退職した初年度は「会社員時代の高収入」に基づいて高い国保料が請求されますが、退職後に無収入や低収入になった場合、2年目の国保料は劇的に安くなります。一方で、任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額」で固定されるため、1年目も2年目も同じ金額を支払い続けなければなりません。「1年目は任意継続が有利だったが、2年目は国保に切り替えた方がはるかに安かった」という逆転が発生することが多々あるのです。かつては任意継続の自己都合脱退は認められていませんでしたが、近年の法改正によって任意継続は申請すれば途中でいつでも脱退し、国保へ切り替えることが可能になっています。