関西で五重塔といえば、京都の東寺や奈良の法隆寺、興福寺といった古代・中世の国宝建築が真っ先に想起されます。しかし、大都市・大阪府内に目を向けると、四天王寺などの著名寺院にある五重塔は戦後の鉄筋コンクリート再建によるものが大半であり、伝統的な木組みによる木造五重塔は長らく存在していませんでした。
その空白を埋める形で建立されたのが、願昭寺の木造五重塔です。寺院関係者の記録および建立史によると、約十数年の歳月と現代の名工たちによる伝統技術の粋を集め、2011年(平成23年)11月に落慶を迎えました。国産の良質な檜(ヒノキ)を惜しみなく使用した総檜造りで、相輪(そうりん)を含めた全高は約37メートルに達します。
願昭寺の開基は昭和期に遡り、宗派は真言宗(単立)。本尊として剣に黒龍が巻き付いた姿で知られる「倶利伽羅不動明王」を奉斎しています。開山以来、人々の現世安穏と厄災消除を祈り続けてきた同寺において、五重塔の建立は「後世へ日本の伝統木造建築文化を継承し、恒久平和を祈願する」という強い信念のもとで結実した大事業でした。釘を極力使わずに組み上げられた組物(くみもの)や優美な軒の反りは、創建から年数を経た現在、木肌の風合いが深まり、周囲の山林と見事な調和を見せています。