そもそも、なぜハーレーだったのか。大型二輪免許の教習所に通い始めた当初、周囲からは驚きの声が上がったという。中型免許からのステップアップではなく、目標は最初から「リッター超えのアメリカン」。妥協を嫌う彼女らしい決断だった。
映画『マイ・ブロークン・マリコ』で見せた剥き出しの感情や泥臭い身体表現に通じる、飾らない生々しさへの渇望がそこにはあった。華やかなスポットライトの影で、生身の肉体と強大なマシンが対話する過酷な時間。クラッチの重みに耐え、転倒の恐怖に打ち勝ちながら手に入れた大型免許証は、彼女にとって自らの輪郭を確かめるための免状でもあったのだ。