もちろん、職能給がすべて悪だったわけではない。働く側にとって最大のメリットは「雇用の安定」と「生活の設計しやすさ」だった。能力は基本的に下がらないとされるため、基本給が下がるリスクは極めて低い。また、様々な部署を経験してゼネラリストを目指すキャリアパスには、この制度が最適だった。
しかし、そこには甘い罠が潜んでいる。能力の評価基準が極めて曖昧なのだ。「本当にその能力があるのか」を客観的に証明するのは難しく、結果として上司へのアピール度や声の大きさ、社内政治の巧拙で給与が決まるケースが後を絶たない。真面目に成果を出している人間ほど、この不透明なシステムに絶望することになる。