従来のヒーロー映画といえば、明解な勧善懲悪と爽快なカタルシスが約束されていた。しかし、本作が提示するのは「反転した世界」での深い苦悩だ。主人公が背負う力は、人々を救うと同時に周囲の現実を破壊していくという痛烈な皮肉。息をのむ戦闘シーンでは、スピード感あふれるヒーローアクションの快感と、崩壊していく街の惨状が対比的に描かれ、観る者の倫理観を激しく揺さぶる。
映像表現の進化も見逃せない。重力を無視したかのように回転する動的なカメラワークは、観客自身が上下の感覚を失うような臨場感を演出する。圧倒的な迫力の一方で、主人公の内面にある孤独が静かに浮き彫りになっていく構図は、近年の映画レビューにおいても極めて高い評価を獲得しているポイントだ。