1983年、シングル『ワインレッドの心』の大ヒットにより、安全地帯の名は日本列島を席巻する。続く『恋の予感』、そして1985年の『悲しみにさよなら』。玉置浩二が書く哀愁を帯びた旋律と、囁くようなウィスパーボイスから突き抜けるようなハイトーンまで自在に操るボーカルワークは、既存の歌謡曲のフォーマットを根底から覆した。
彼の歌にはピッチの正確さだけでは説明がつかない、生々しいエモーションが宿っている。吐息ひとつ、フレーズの語尾の処理ひとつにまで宿る情念。日本の音楽産業がシティポップやニューミュージックの台頭で激変する渦中にあって、玉置の歌声はジャンルの壁を軽々と破壊し、大衆の耳を奪い去った。