遺品整理や大掃除の際、古い桐箱やアルバムの間から姿を現す紙幣の代表格が、二宮尊徳一円札(A壱円券)と武内宿禰一円札(い壱円券など)です。ネット上では「祖父の遺品から一円札の束が見つかり、数万円になった」という歓喜の報告が散見される一方、「古銭屋に持ち込んだら買い取りを断られた」という落胆の声も交錯しています。この激しいギャップは一体どこから生じるのでしょうか。
結論から明かせば、一円札現在の価値を決定づける最大の要因は「残存数」と「現在も使えるお金(現行紙幣)であるかどうか」にあります。戦後まもない1946年(昭和21年)に発行が開始された二宮尊徳のA号券は、インフレ抑制と新円切り替えの混乱期に実に数十億枚単位で大量印刷されました。さらに、この紙幣は現在でも日本銀行法に基づき1円として有効な「現行紙幣」です。
古銭市場において、現行紙幣かつ市場に膨大な数が眠っている並品(流通してシワや汚れがついたもの)は、希少価値がほとんど付きません。古銭専門の鑑定士が「一般的な二宮尊徳の流通品は、1枚あたり額面通り(1円)からせいぜい数十円の取引相場が現実」と明かす背景には、コレクター需要を供給量が遥かに上回っている実情があります。しかし、落胆するのは早計です。同種であっても「状態」「印刷年代」「紙幣番号」という3つの鍵が揃った瞬間、数千倍もの跳ね上がりを見せる特殊な世界が存在します。