このブームを道具の側面から支えているのが、伝統を守り続ける日本の調理器具製造産業だ。なかでも横浜中華街に本店を構える老舗「照宝」のせいろは、料理好きの間で手に入れること自体がひとつのステータスとなっている。職人が手作業で編み込む竹や杉、ヒノキのせいろは、蒸気の対流と余分な水分の逃がし方が計算し尽くされており、食材が水っぽくならずふっくらと仕上がる。
プラスチック製のスチーマーやシリコン容器、電子レンジ調理器が普及した現代において、あえて天然素材のせいろが選ばれる理由は、仕上がりの質感と香りの決定的な違いにある。蓋を開けた瞬間に広がる木の清々しい香りと、野菜の鮮やかな発色。五感を刺激するその体験そのものが、調理器具製造産業の底力と手仕事の価値を改めて証明している。