日本の料理界を代表する料理人たちも、ケチャップという大衆調味料のポテンシャルを高く評価してきた。フランス料理の巨匠・三國清三シェフは、フライパンの底に焼き付いた肉の旨味(シュック)を赤ワインでこそげ落とす「デグラッセ」の重要性を説く。肉の焦げ目をソースの一部として溶かし込むことで、ケチャップの単調な甘みが一瞬で複雑なフレンチソースの深みへと昇華する。
一方で、生活の知恵を料理に落とし込む料理家・栗原はるみ氏の哲学も示唆に富む。NHK『きょうの料理』などの現場で長年親しまれてきた彼女のレシピは、ケチャップにすりおろし玉ねぎや少量のハチミツ、醤油をブレンドし、舌の上に広がる家庭的な安らぎと洗練を両立させる。巨匠たちのアプローチに共通するのは、ケチャップを「完成品」としてではなく、素材の旨味を引き出す「ベース調味料」として捉える視点だ。