市販されているワンプッシュ剤の主成分は、除虫菊の有効成分をベースに化学合成されたピレスロイド系殺虫剤だ。この成分は昆虫の運動神経系に直接作用し、イオンチャネルの働きを狂わせることで急激な麻痺を引き起こす。飲食店やビルなどで繁殖しやすく耐性を持ちやすいとされるチャバネゴキブリであっても、微量のミストが体に触れただけで神経伝達が遮断され、即座にノックダウンに至る。
ピレスロイド系殺虫剤の大きな特徴は、温血動物である人間の体内に入っても酵素によって素早く代謝・排出される選択毒性を持っている点だ。虫には極めて毒性が強いものの、哺乳類に対する安全性が確保されている科学的根拠がここにある。ただし、魚類や昆虫、爬虫類にとっては猛毒となるため、アクアリウムのある部屋での使用には厳重な警戒が求められる。