和菓子を取り巻く環境は、国境を越えて劇的な地殻変動を起こしています。発端となったのは、2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産登録の経緯を辿ったことです。この登録において、正月のおせち料理や節句の行事食とともに、年中行事と密接に結びついた和菓子の存在が重要な構成要素として高く評価されました。さらに近年では、日本の「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた動きなどと呼応するように、和菓子単独の文化的価値を独立した遺産として再認識しようとする機運が文化庁や業界団体を中心に高まっています。
これに伴い、和菓子に対する海外の反応と評判は熱狂的なものへと変化しました。かつて欧米圏の旅行者からは「あんこが甘すぎる」「豆を甘く煮る感覚が理解できない」といったネガティブな反応が散見されたのも事実です。しかし、近年の世界的ヘルシー志向とプラントベース(植物性食品)市場の急拡大がゲームのルールを一変させました。
牛乳やバターを一切使わず、タンパク質と食物繊維が豊富な小豆と天然の寒天で作られる和菓子は、グルテンフリーかつヴィーガン対応のスーパーフードとして欧米のトップシェフたちから称賛を浴びています。フランス・パリやアメリカ・ニューヨークでは、現地の有名パティシエが和三盆や抹茶、練り切りの技術を自らのデザートに取り入れるケースが定着しました。伝統の文脈を知る外国人観光客が、京都の老舗茶寮で上生菓子を口にし、「甘味を超えたメディテーション(瞑想)の体験」と評する光景は日常となっています。
日本の伝統文化和菓子の現在に目を向けると、インバウンドによる需要喚起が起きる一方で、国内消費市場は少子高齢化や米・小豆離れといった構造的な課題とも直面しています。単なる伝統の墨守だけでは生き残れない時代において、和菓子産業はかつてない変革の季節を迎えているのです。