カートにスマートフォンを差し込み、商品をスキャンしながら進む。レジ待ちの列は消滅した。店内カメラと棚センサーが連動し、欠品はリアルタイムでバックヤードに通知される。しかし、テクノロジーの導入はコスト削減のためだけではない。
浮いた人員はすべて、フロアコンシェルジュや専門販売員へと再配置された。高齢の買い物客がデジタルカートの操作に戸惑えば、すかさずスタッフが寄り添う。機械化で時間を削り、その削った時間で顧客との対話時間を増やす。この逆転の発想が、デジタルアレルギーを抱えがちなシニア層の定着を支えている。
専用アプリを通じた個別提案も進む。過去の購買履歴と地域の気象データを掛け合わせ、「今夜の冷え込みに合わせた地元野菜鍋」の提案がスマートフォンに届く。テクノロジーが冷たい効率化ではなく、昔ながらの「気の利く八百屋」のような温もりを再現するために使われている点が興味深い。