コンクリート打設は、時間との冷酷な戦いである。セメントと水が接触した瞬間から水和反応(硬化プロセス)が始まっており、現場への生コンクリート搬入から打ち込み完了までには、日本建築学会標準仕様書(JASS 5)等で厳格な制限時間が定められている。外気温が25℃未満の場合は120分以内、25℃を超える夏季には90分以内に打ち込みを完了させなければならない。
現場にアジテータ車(生コン車)が到着すると、直ちに「受入検査」が実施される。現場監督や監理者の立ち会いのもと、出荷された生コンが発注通りの品質を保持しているかをその場で検証する作業だ。ここで中心となるのが生コンクリート スランプ試験である。円錐台形の試験器(スランプコーン)に生コンを詰め、コーンを引き抜いた際にどれだけ頂部が沈み落ちたかをセンチメートル単位で測定する。硬すぎれば作業性が悪化して充填不良を招き、柔らかすぎれば水分の過剰によって完成後の強度が著しく低下する。
受入検査に合格した生コンは、コンクリートポンプ車を通じて型枠内へと圧送される。ここからが職人の腕の見せ所となる打設作業の本体である。打設は一定の厚さ(一般に40〜50cm以下)ごとに水平な層状に打ち進められ、その直後を追うようにバイブレーター 締め固めが行われる。棒状振動機を垂直に挿入し、型枠の隅々まで液状化させながら気泡を浮き上がらせていく。バイブレーターの挿入間隔は一般に50cm以下、挿入時間は1箇所あたり5〜15秒程度が基本とされる。引き抜く際は、コンクリートの表面に穴を残さないよう、秒速数センチのペースで垂直に静かに引き抜く高度な身体感覚が要求される。
バイブレーターを長くかけすぎると、重い粗骨材(砂利)が下に沈降し、上部にセメントペーストと水ばかりが集まる「材料分離」を引き起こす。逆に短すぎれば気泡が抜けず、強度が著しく落ちる。締め固めと同時に、木槌で型枠の外側を叩いて空気抜けを促し、天端(最上部)のレベルをレーザー測定器で確認しながら木ゴテや金ゴテで均していく。この一連の流れるようなチームプレーが淀みなく完結して初めて、強靭なコンクリート構造物が誕生する。