『美しき生命』の冒頭は、かつて絶対的な権力を握っていた君主の回想から幕を開けます。
「I used to rule the world(かつて私は世界を支配していた)」「Seas would rise when I gave the word(ひとこと命じれば海原さえ波立った)」。この劇的な独白に続くのは、突如として訪れる暗転です。朝目覚めると王宮の扉は固く閉ざされ、自分が信じた強固な城壁は、実は「頼りない砂の城(castles made of pillars of sand)」の上に築かれていたことに気づかされます。
歌詞中には、キリスト教の聖書に由来するシンボリズムが数多く埋め込まれています。
たとえば「Saint Peter won't call my name(聖ペテロは私の名を呼んでくれない)」という一節。新約聖書において、天国の門の鍵を預かる使徒ペテロから拒絶される描写は、主人公が死後に救済される希望すら断たれた絶対的絶望を突きつけます。また「pillars of salt(塩の柱)」は、旧約聖書『創世記』で神の警告を破って滅びゆくソドムの街を振り返ったロトの妻が塩の柱に変えられた逸話を踏襲しており、過去への未練や執着がもたらす悲劇を象徴しています。
歓喜に満ちたオーケストレーションと、救いのない敗者の手記。この強烈な二面性こそが、聴く者の心を惹きつけて離さない引力となっています。