言葉の起源は1953年、関西電力の副社長が雑誌の座談会で放った一言に遡る。当時、神戸の六甲山から見下ろす市街地の電灯、およそ496万個の1か月あたりの電気代を当時の為替レート(1ドル=360円)で換算したところ、ちょうど100万ドルを超えたのだ。「神戸の夜景は一晩で100万ドルの価値がある」。この極めて即物的な試算がキャッチコピーとして独り歩きし、全国へと広がっていった。
時代の変遷とともに、その額面は「1000万ドル」へと跳ね上がった。バブル期には神戸の電灯数と電気料金の再試算によって桁がひとつ増え、レートの変動も相まって言葉のインフレが進んだ。しかし、数字の大きさが問題なのではない。山から見下ろす光のひとつひとつが、工場で働く人々の汗であり、食卓を囲む家族の温もりであるという事実こそが、この風景に普遍的な情緒を与えている。
現在では、単なる電気代の換算を超え、都市が創出する観光価値そのものを指す言葉として定着した。夜景が持つ経済的な引力は、かつての計算式を遥かに凌駕する広がりを見せている。