札幌市中央区南16条西8丁目の静かな住宅街に佇んでいた「福来軒 本店」。創業は1965年(昭和40年)にまで遡ります。戦後日本の高度経済成長とともに発展した札幌ラーメンの草創期から、半世紀以上にわたってその味を守り続けてきたパイオニア的存在です。
福来軒のラーメンは、札幌味噌ラーメンの真髄ともいえるスタイルを確立していました。強い火力で熱した中華鍋にラードを熱し、モヤシやタマネギなどの野菜を手早く炒め、そこに豚骨ベースのスープと特製味噌ダレを注ぎ込んで一気に仕上げる伝統製法です。丼の表面を覆う熱々のラード層が湯気を閉じ込め、厳しい冬の札幌でも最後まで熱々のまま味わえる仕掛けは、まさに北国ならではの知恵でした。
本店のみならず、歓楽街の中心部に構えていた「すすきの店」も多くの飲兵衛や深夜族の胃袋を支え、札幌の夜の定番シメラーメンとして確固たる地位を築きました。本店・支店ともにそれぞれの客層から熱烈に支持され、札幌を代表する老舗として名を馳せたのです。