夜間の観光誘致において、姨捨地区が選択したのは「暗闇の保護」だった。一般的な観光地が派手なイルミネーションに走るなか、地域住民は光害(ひかりがい)対策を徹底。街灯を波長制限された赤外光に近いLEDへ換装し、夜間照明の照度を最小限に抑えた。
月明かりだけが水田を照らす環境を作り出した結果、国際的な暗天保護組織からの高い評価を獲得。静寂のなかで水面に浮かぶ月を静観するツアーは、一泊数十万円の高価格帯ロッジを中心に連日満室が続く。過剰な混雑を避けつつ高い収益性を確保する、観光公害(オーバーツーリズム)とは無縁の成功モデルだ。