受験生から寄せられる質問の中で最も頻度が高いものが、「問題文を読んでも定比例と倍数比例のどちらが問われているのか判別できない」という悩みです。結論から述べると、判別の基準は「舞台に上がっている化合物の数」という1点に集約されます。
定比例の法則との違いを極めて明快に整理すると、次のようになります。
- 定比例の法則(プルースト提唱・1799年):「1つの化合物」の中身の話。
例:どこから採取してきた水(H₂O)であっても、水素と酸素の質量比は常に1:8で一定である。 - 倍数比例の法則(ドルトン提唱・1803年):「2つ以上の異なる化合物」を比べる話。
例:炭素と酸素からなる一酸化炭素(CO)と二酸化炭素(CO₂)において、炭素の質量を固定して酸素の質量を比較すると、その比は1:2という簡単な整数比になる。
日常の風景に例えるなら、定比例の法則は「特定の店のショートケーキ1個に含まれるスポンジと生クリームの配合比率は、どのケーキを買っても常に同じ」という品質の一貫性を示すものです。一方、倍数比例の法則は「生クリームの量を同じにした場合、ショートケーキとイチゴ増量ケーキに使われるイチゴの個数比は、1個対2個という整数比になる」という、別々の製品間における部品の個数比を指しています。
教科書の文面では「A、Bの2元素からなる複数の化合物が存在するとき……」と抽象的に記述されるため難解に感じられますが、一酸化炭素と二酸化炭素の比を思い浮かべれば一瞬で解決します。炭素原子(C)1個に対して、結合する酸素原子(O)の数が1個から2個へステップアップするからこそ、質量もそのまま2倍(整数倍)になります。これが法則名に「倍数」という言葉が冠されている理由です。