「苦労は買ってでもしろ」という慣用句は、「若いときの苦労は必ず将来の役に立つため、自ら進んで困難な経験を求めるべきだ」という教えです。金銭を払ってでも手に入れる価値があるほど、困難を乗り越えた経験は人格形成や能力の向上に寄与するという考えに基づいています。
語源のルーツは江戸時代の教訓書や上方いろはかるたの「苦労は身の薬」などに通じ、商人文化や職人の徒弟制度の中で培われてきました。商売の厳しさや職人技の習得には失敗や試行錯誤がつきものであり、若年のうちに数多くの修羅場をくぐり抜けることが、一人前の大人になるための近道とされていた背景があります。
ここで見落としてはならないのは、本来この言葉が「自分自身の主体的な挑戦」を促す自己啓発のフレーズであった点です。決して組織の上の人間が部下に理不尽な労働や我慢を強いるための免罪符ではありませんでした。