日本最高峰のアスリートとして強靭な肉体を誇っていたはずの木村が、なぜ50代半ばという若さで脳梗塞を発症したのか。その決定的な脳梗塞の原因として挙げられるのが、長年患っていた糖尿病でした。
現役時代は極限まで身体を酷使し、膨大な運動量によって代謝を維持していたトッププロも、スパイクを脱げば一人の人間に戻ります。木村自身、引退後のインタビューや回想録で率直に明かしている通り、現役引退後は極端な運動不足に陥る一方で、現役時代と変わらぬ旺盛な食欲、愛飲する甘い炭酸飲料や缶コーヒー、さらには愛煙家としての生活習慣が長年続いていました。健康診断で高血糖を指摘され、糖尿病と診断されてからも、「自分は元アスリートだから大丈夫だ」という過信から、厳格な食事制限や服薬管理を怠りがちだったといいます。
糖尿病専門医の臨床データが示す通り、慢性的な高血糖状態は全身の毛細血管および大血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を急速に進行させます。特に脳血管において動脈硬化が進むと、血管の内腔が狭小化し、血栓が形成されやすい極めて危険な状態に陥ります。木村の場合、糖尿病による血管への長年のダメージに加え、脱水や疲労といった偶発的な要因が重なり、脳梗塞の発症に至ったと分析されています。「元アスリートだから健康」という慢心が、皮肉にも生活習慣病の早期治療を遠ざける要因となってしまったのです。