松嶋菜々子のキャリアを語るうえで、2000年の『やまとなでしこ』を外すことはできない。「玉の輿」を唯一無二の価値観として生きる神野桜子というキャラクターは、高飛車でありながらどこか憎めない愛らしさを備えていた。彼女が放つ「今夜はたった一人の人にめぐり逢えたような気がする」という名台詞は、四半世紀が経過した2026年の今なお語り継がれる伝説的シーンだ。
一方で、2011年の『家政婦のミタ』で見せた劇的な変貌は、日本のドラマ界に激震を与えた。一切の感情を削ぎ落とし、「それは業務命令でしょうか」と淡々と応じる無表情な家政婦・阿須田三田。最終話で40.0%という怪物的な最高視聴率を叩き出したこの作品は、それまでの「美しきヒロイン」というステレオタイプを自ら打破し、役者としての新境地を完全に切り開いた瞬間だった。