日本中を驚愕させた圧倒的な結末ですが、その背景にはボクシングという競技における極めて過酷な契約条件と埋められない体格差が存在していました。
最大の要因となったのが歴然とした体重差です。前日計量の段階で、メイウェザーはウェルター級リミットに近い66.7kg(147ポンド)、一方の那須川天心は62.1kgを計測しました。天心の当時の適正階級はフェザー級(約57.15kg前後)であり、無理に体重を増やして臨んだ状態でした。これに対し、メイウェザーは計量後のリカバリーによって当日は70kg近くまで増量していたと見られ、実質的な体重差は約7〜8kg、階級にして3〜4階級以上の開きがあったと分析されています。ボクシングにおいて1階級(約1.5〜2kg)の差が勝敗を大きく分ける中、この重量差はパンチの破壊力と打たれ強さに致命的な違いを生み出しました。
さらに、厳格な契約ルール詳細も天心を縛りました。この試合は純粋なボクシングルールであり、キックボクサーである天心最大の武器である蹴り技は一切禁止。関係者の証言や海外メディアの報道によると、「蹴りを1発でも出した場合、500万ドル(当時のレートで約5億5000万円)以上の違約金が発生する」という極めて厳しいペナルティ条項が組み込まれていたとされています。絶対的な武器を封じられ、体格で大きく上回るボクシング史上最高峰の技術者とパンチのみで打ち合うという、極めて不利な条件下での戦いでした。