嘉瀬川ダムの貯水率にまつわるネット言説で最も根深い誤解が、「夏休みに湖畔を訪れたら干上がっていた、佐賀は給水制限になる」という早とちりです。前述した「洪水期制限水位」によって、夏場の嘉瀬川ダムは意図的に水深を十数メートル以上も下げて運用されています。
この時期に富士しゃくなげ湖を訪れると、普段は水没している旧道のアスファルトや橋脚、湖岸の赤土がむき出しになります。観光客や通過するドライバーがその異様な光景を撮影し、「大干ばつ」「ダムが枯渇寸前」という見出しとともにショート動画やSNSに投稿することで、誤った危機感が瞬く間に拡散されます。
実際には、これは「豪雨を受け止めるための巨大なポケットを空けて待っている状態」であり、治水安全上は極めて理想的な管理状態です。逆に、夏の台風シーズンに貯水率が100%近くまで達している状態こそが、治水上は最も危険な異常事態といえます。表面的な水位の低さに惑わされず、「現在の設定水位(制限水位)に対して何%の水が溜まっているのか」を正しく読み解くリテラシーが求められます。