大正期を舞台にした作品史を語る上で、決して外せない金字塔がふたつ存在する。ひとつは、1970年代に大和和紀が手がけた名作『はいからさんが通る』だ。袴姿にブーツを履き、自転車を疾走させる主人公・花村紅緒の生き様は、当時の読者に強烈なインパクトを与えた。華やかな大正ロマンの美意識と自由を求める女性像を描き出した同作は、時代を超えて愛される少女漫画の象徴であり続けている。
そして時代が下り、このジャンルに新たな歴史を刻んだのが、集英社『週刊少年ジャンプ』で連載された吾峠呼世晴による『鬼滅の刃』である。鬼に家族を殺された少年が妹を人間に戻すために刀を振るうストーリーは、過酷な宿命を描くダーク・ファンタジーとして世界的な社会現象を巻き起こした。伝統的な時代劇の様式美を踏襲しながらも、近代化の波が押し寄せる大正ならではの切なくも壮絶な世界観が、爆発的な共感を呼んだ。