オカルトと裏社会、それぞれの最前線を取材してきた専門家たちは、この現象をどう捉えているのか。
怪談サークル「とうもろこしの会」会長であり都市伝説の研究で知られる吉田悠軌氏は、噂の構造を「近代医療に対する人々の根源的な不信と恐怖の裏返し」と分析する。白い巨塔と呼ばれる密室空間で何が行われているか分からないという不安が、エロティシズムと結びついて民話化したという見立てだ。
対して、世界中の危険地帯や国内のアンダーグラウンドを歩き続けるジャーナリストの丸山ゴンザレス氏の視点は、より物質的で現実的だ。裏社会の経済活動を追ってきた丸山氏の取材網からは、医療資格を剥奪された元医師による闇診療や、非合法ビジネスと医療従事者のグレーな癒着がしばしば浮かび上がる。
吉田氏が解き明かす民俗学的な「物語の伝播」と、丸山氏が告発する「闇社会の実在」。二つの視点が交わる地点にこそ、人々がピンク病院と呼んで恐れ、同時に惹きつけられるものの正体がある。