創業明治36年(1903年)。日露戦争前夜の時代から続く「手打うどん やをよし」の屋号は、いまや愛知の麺文化を語る上で欠かせない象徴となった。その真骨頂と呼べる一杯が、蒲郡の海が育んだアサリを主役に据えた名物「ガマゴリうどん」である。
丼が運ばれてきた瞬間、立ち上る湯気のアロマに息を呑む。出汁のベースとなるのは、厳選されたムロアジ節やカツオ節、昆布から丁寧に引いた澄んだ和出汁だ。そこに殻ごと豪快に煮出されたアサリの滋味とコハク酸が溶け込み、地元の本醸造醤油が輪郭をきりりと引き締める。口に含むと、魚介の角のない塩気と節系の複層的な旨味が押し寄せ、後味は驚くほど清らかに消え去る。これが計算し尽くされた伝統の出汁の秘密だ。
2026年の最新メニュー展開において、店はさらなる高みを見せている。定評ある定番に加え、三河湾の旬の魚介と季節の香味野菜を組み合わせた限定の冷製仕立てや、出汁の純度を極限まで研ぎ澄ませた特選アサリ尽くしの一杯が登場。長年の常連すら唸らせる、確かな現代的アップデートが施されている。