壇ノ浦の調査がこれまで本格化しなかったのには、地理的な要因が大きい。関門海峡は、1日に何度も潮流の向きが変わり、その速度は最大で時速約18キロメートル(10ノット近く)に達する。これは大型船の航行すら困難にするほどの「海の難所」だ。
さらに、海底は長年の土砂の堆積と、激しい潮流による侵食が繰り返されており、遺物が当時の位置に留まっている可能性は極めて低いとされてきた。しかし、近年のデジタルツイン技術により、過去800年間の潮流の変化と土砂の移動シミュレーションが可能になった。これにより、「遺物が流されて堆積しやすい場所」の特定に成功し、ピンポイントでの調査が可能になったのだ。