抹茶の進化を語る上で、数百年の歴史を背負う名門の動向を見逃すわけにはいかない。京都の茶文化を牽引してきた「一保堂茶舗」は、現代の都市生活者が日常の中で抹茶を気軽に愉しめるよう、スタンド形式のテイクアウトや丁寧なペアリング提案を展開し、敷居の高さを心地よい親しみやすさへと昇華させている。クラシックな濃茶の重厚さを守りつつも、都市のスピード感に寄り添うその姿勢は若い世代の心を掴んで離さない。
一方、宇治の雄である「辻利一本店」や茶道界から絶大な信頼を集める「丸久小山園」も、独自の技術と圧倒的な品質を武器に新たな体験価値を創出している。丸久小山園の茶銘が持つ圧倒的な旨味とキレは、バリスタが一杯ずつ丁寧に点てるティースタンドの現場で再評価され、辻利一本店の厳選茶葉を使った濃密な甘味は世代を超えて人々を魅了する。かつて千利休が大成させた茶の湯の精神は、形式にとらわれることなく、老舗の革新的なアプローチによって現代の街角に息づいている。