日本へ生還した松島さんを待っていたのは、過酷な肉体的激痛と、いつ襲われるかわからない恐怖という重度のトラウマ(PTSD)でした。世間からは腫れ物に触るような同情の目が向けられ、女優としてのキャリアも不透明になる中、彼女を絶望の淵から救い上げたのが、放送作家で親交の深かった永六輔さんでした。
永六輔さんは、首にコルセットを巻いて憔悴していた松島さんに対し、開口一番こう言い放ちました。
「トモ子、お前はライオンとヒョウの食べ残しだ!猛獣に食い残された女なんて世界中に誰もいないぞ。誇りに思え!」
この痛烈極まりないブラックユーモアに、松島さんは思わず吹き出し、張り詰めていた心の緊張が一気に解き放たれたと述懐しています。永六輔さんは自身のラジオ番組や主宰するステージへ松島さんを積極的に招き、猛獣ネタを明るいトークへ昇華させる場を作り続けました。「同情」ではなく「笑いと肯定」で包み込む永さんの深い愛情が、松島さんから被害者意識を取り去り、力強く社会復帰する決定打となったのです。
また、黒柳徹子さんが司会を務める『徹子の部屋』への出演も、彼女の回復を語る上で欠かせません。松島さんは同番組に通算何度もゲスト出演し、襲撃当時の恐怖を黒柳さんと共にユーモアを交えて語り合いました。「ライオンに頭を噛まれた瞬間、骨がバリバリと鳴る音が頭蓋骨に響いたのよ」と笑顔で語る松島さんの姿は、視聴者に驚きと同時に生きる勇気を与え、彼女の代名詞的なエピソードとして定着していきました。