千日回峰行に挑む行者は、純白の死装束を身にまとい、腰には必ず「降腹(こうふく/ふりぶく)の短刀」と「死出紐(しでひも)」、そして三途の川の渡し賃とされる「六文銭」を携帯して山中を巡拝します。
この携行品には、次のような具体的な意味と役割が定められています。
- 短刀(白木柄の懐剣):行を続けられなくなった際、自らの喉を突くか腹を切って自害するための刃物。
- 死出紐(麻の紐):短刀で自決できない状況に陥った際、木の枝などに掛けて首を吊るための紐。
- 六文銭(冥銭):万が一命を落とした際、死後の世界へ旅立つための埋葬・渡し賃。
比叡山の慣例では、回峰行が通算100日目を越えると、もはや後戻りは一切許されなくなります。体調不良、骨折、高熱、悪天候など、いかなる理由があろうとも「歩行を中止すること=自害」を意味する絶対の不退転が課せられます。この死の覚悟を行者に刻み込む行為こそが、千日回峰行の根幹を成す思想です。