即位の礼の視覚的ハイライトとなるのが、宮殿を彩る調度品と伝統装束、そして街頭を駆ける祝賀パレードです。ここには、日本の伝統工芸の粋と、徹底した現場オペレーションが注ぎ込まれています。
天皇陛下がお立ちになる「高御座」は、高さ約6.5メートル、重さ約8トンに達する漆塗りの巨大な八角形の玉座です。屋根には鳳凰が輝き、鏡や剣の意匠が施されたこの構造物は、普段は京都御所の紫宸殿に安置されています。令和の代替わりに際しては、専門業者によって部材ごとに慎重に解体され、陸路で東京の皇居へと運ばれた後、数カ月をかけて修復・漆の塗り直しが行われました。隣に並ぶ皇后陛下の「御帳台」とともに、古代の宮廷建築技術を今に伝える極めて貴重な文化財です。
儀式で着用される即位の礼の衣装にも厳格な定めが存在します。天皇陛下がお召しになるのは、歴代天皇のみに許された「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」と呼ばれる櫨(はぜ)と蘇木(そぼく)で染め上げられた深みのある赤茶色の束帯です。この色は「昇る朝日の輝き」を象徴するとされ、光の当たり方によって微妙に色合いが変化します。一方、皇后陛下は「十二単(五衣・唐衣・裳)」を着用され、伝統的なおすべらかしの髪型に「釵子(さいし)」を挿した優美な姿で儀式に臨まれました。
儀式後の「祝賀御列の儀」では、現場の熱気が最高潮に達しました。皇宮警察および警視庁による厳戒態勢が敷かれる中、特注の国産オープンカー(トヨタ・センチュリーをベースに改造)が皇居宮殿を出発。秋晴れの空の下、沿道を埋め尽くした約11万9000人の観衆から沸き起こる歓声と小旗の波に対し、両陛下が終始柔らかな笑みで手を振られる姿は、多くの人々の記憶に強く刻まれています。