「美しさは、完璧に修正された文字ではなく、その瞬間の潔さに宿る」――そう語るのは、現代日本を代表する書道家の武田双雲氏だ。双雲氏は、手書き文字が持つ力と二度書きの弊害について、長年にわたり警鐘を鳴らし続けてきた。
「多くの人が『失敗を隠すため』に筆を重ねますが、二度書きされた文字は一目で分かります。勢いが殺され、文字全体の命が消えてしまうからです。習字の教えにある『一筆入魂』とは、上手く書くことではなく、その瞬間の自分を受け入れる覚覚悟のこと。たとえ少し文字がかすれても、凛とした一筆の方が、重ねて塗り潰した文字よりはるかに誠実で美しく届きます」と双雲氏は主張する。