宮泉銘醸の歴史を語る上で欠かせないのが、現社長である山口佳樹氏の存在だ。伝統に胡坐をかくことなく、酒造りのプロセスを一から再構築した彼の決断が、「冩樂(写楽)」ブランドの運命を大きく変えた。かつての会津酒といえば、しっかりとした甘口と旨味が主流であったが、山口氏は現代の食生活に寄り添う「果実のような瑞々しい香りと、潔いキレ」を徹底的に追求した。
酒米の選定から精米歩合、発酵温度の微調整に至るまで、データと感性を融合させたアプローチは、当時の酒造業界に強いインパクトを与えた。結果として生まれた「写楽」は、日本酒に対して「重い」「古臭い」というイメージを抱いていた若い世代や海外の愛飲家をも一瞬で虜にしたのである。